中央銀行の金融政策とFX相場の関係について

中央銀行の金融政策とFX相場の関係について

各国の中央銀行が実施する政策決定会合とその後の政策金利等の発表というものには非常に金融市場の関心が集まりますし、特に為替市場は政策決定に関連のある通貨はその政策決定内容で大きく相場が動くことが頻繁に起こるものです。

この中央銀行政策決定会合とFXとの関係について今回は整理してみることにします。

利上げ・利下げで相場は大きく動く

中央銀行はインフレが進行すれば利上げを行って抑制をすることが大きな役割になりますし、景気が後退すれば利下げを行ってその回復を促すという役割を長く担ってきています。

その国に帰属する法定通貨は中央銀行が利上げを行えばほかの法定通貨との関係上買われることになりますし、利下げが行われれば売られるのか基本となります。

ただ、実際の金融市場ではそう簡単に相場は動かず、株式市場や債券市場の反応次第でまったく逆の方向に動くこともあるのです。

たとえば米国FOMCでは今年3回の利下げを行いましたが、本来であればドル安がかなり進むべきところでしたが、利下げを好感して株式市場が大きく上昇するようなことになればドルは必ずしも安くならないという逆の動きをすることになるのです。

また株式市場が活況を呈した場合には資金が世界から米国に集まる動きとなり逆にこれが一時的にせよドル買い需要が高まることからドルは下がらないといった状況を呈することもあるのです。

足元の米国のドルの状況はまさにこれで利下げだから簡単にドル安は示現しないことがよくわかります。

もともと中央銀行はりあげや利下げで短期金利は一応制御できるとしていますが、長期金利についてはコントロールできないのが基本ですし、直近では米国は利下げを進めているにも関わらず短期のレポ金利が跳ね上がるといった状況を見せており、大量の資金投入でなんとかその上昇を抑える始末で政策金利を下げたから市場金利が下がるかどうかはわからないというかなり微妙な状況を呈し始めています。

非伝統的な緩和措置でも相場は大きく変化

近年の中央銀行の政策にはもうひとつ量的金融緩和という金利の政策決定だけではなく市場にどれだけ資金を供給するかも政策の大きなポイントになっています。

2008年サブプライム問題の結果としてリーマンブラザーズが9月に破たんした金融危機後は世界的に100年に1度の危機であるとグリーンスパン元FRB議長が議会で証言したことから米国FRBは積極的に市場に資金供給を行い株価が大崩れしない措置を延々ととることになりました。

バーナンキ元議長の下では都合三回のQE・量的金融緩和が実施され、そのたびに株価は大きく上昇することとなりあらゆる資本市場に余剰資金が入り込み金融市場は大きく上昇するようになっているのです。

こうした政策は一時的と見られてきましたが現在ではすでに非伝統的ではなく常態的に実施されるものになってきていることから少しでも景気が悪くなりますと市場が量的緩和を催促するようにもなっており、ひと昔前とは中央銀行の金融政策にも大きな変化が現れるようになっているのです。

マイナス金利を導入する中央銀行も

足元では欧州に続き日本もマイナス金利を導入しています。

伝統的な経済学的な手法ではマイナス金利というのは異常中の異常ですが、すでに量的金融緩和の手法のひとつとして欧州と日本の中央銀行はこの政策を採用しています。

本来であればマイナス金利の通貨など買われるわけもないわけですが、実需が存在していることもあり、市場ではマイナス金利を導入した通貨でも買いが入るという実に不思議な状況が続いています。

これも中央銀行における21世紀の金融政策としてはかなり不思議なものになっていますが、日欧ともにマイナス金利を停止する動きは出ていない状況です。

このように各国の中央銀行は様々な手立てを使って景気が減速しないように努力をするようになっていますが、公式に口には出さないものの自国通貨を安く誘導することも密かに行っているのが実情で相対的な金融政策のなかで各法定通貨も動いていく時代になっていることを改めて理解することができます。

FXは本来は安い金利の通貨を売って高い通貨を買うことでその金利差を利益にすることが基本となる取引でしたが、各国ともに低金利時代の中にあってはより総合的な金融政策の中で相対的な通貨の高安が決まっていくようになっていることがわかります。

今後も主要国を中心として中央銀行の政策決定会合の結果はFXに大きな影響を与えるたけに注目していくことが必要です。

最近ではこうした政策決定会合の結果がもっともFX相場を動かす要因になっていることは改めて認識する必要があります。