貿易収支がFXに与える影響について

貿易収支がFXに与える影響について

ニュースの経済指標などで定期的に耳にするのが各国の貿易収支です。これは個別国の貿易における一定期間の収支を示したものであり、輸出金額と輸入金額の差額のことを表しています。輸出金額が輸入金額を大幅に上回る状況は貿易黒字と下示されますが、逆に輸入金額が輸出金額を上回る場合は貿易赤字と呼ばれることになります。この貿易収支、実はFXにも非常に重要な影響を与えるものであり、取引する通貨ペアにかかわる国の貿易収支は常にしっかりとその状況を確認しておく必要があるのです。今回はそんな貿易収支について取り上げてみることにします。

為替にもろに影響する各国の貿易収支

貿易収支と聞くと為替と直結する問題という感覚があまり働きませんが、実は各国の為替に非常に大きな影響を与えるものになっています。

ドル円の場合実需は全体取引の1割程度とかなり少な目ですが、投機的な為替の売買というのは売ればどこかで買戻しを迫られることになりますし、逆に買えば売り戻す必要がでるものです。直近のポンド円の11円近い猛烈なショートカバーの示現はまさにこうした投機的売買によるものということができるわけですが、実需による売買というのは買い切り、売り切りで反対売買が一切出ないことが大きな違いとなるわけです。

貿易収支で黒字が増えることになれば貿易相手国から外貨として受け取る額が多くなりますので、ドルベースの取引ですとドルを売って日本円にするために円を買うことになりますから当然円高が進むことになるのです。また逆に貿易赤字が増えた場合には円を売ってドルを買って決済することになりますので、今度は逆に円安が進行することになってしまうのです。このように貿易収支の結果というのは為替の動きを考える上ではかなり重要なファクターであることが理解できます。

日本の貿易収支は黒字から赤字になり一旦戻してまた赤字傾向

日本の貿易収支を見てみますと、これまで貿易国として長く黒字を計上してきた国として有名せしたが、11年前のリーマンショックを契機として貿易赤字国に転落することとなり、その後は徐々に回復傾向にありましたが、2011年3月に東日本大震災で原発がすべて停止したことからエネルギー輸入が大幅に拡大しまたしても貿易赤字に転落することになります。さらにそこから8年以上を経過して貿易黒字が増加する傾向にありましたが、直近ではまたしても貿易赤字が拡大するというかなり微妙な推移をたどることになっています。これをドル円の為替推移を比較してみますと、かなりドル高円安やドル安円高のタイミングを符合することも見えてくるのです。

ドル円月足推移

米国はトランプの出現で赤字が解消傾向に

一方米国の状況はと言いますと、1991年に一時的に黒字転換した米国の経常収支は、1992年には再度赤字に転じ、1997年までの5年間は年率21.5%というハイペースで赤字を拡大し続けました。また1998年以降2006年までの8年間はさらに大きな赤字拡大を続けましたが、2007年以降は経常収支赤字縮小に転じ、2013年までの7年間は概ね年率9.0%赤字縮小よりも大きく赤字縮小が進んだことがわかります。ただトランプが2017年に大統領に就任してからはさらにこの貿易赤字を減らす動きにでており積極的に対貿易赤字国に関税をかけるなどの措置を行っていることから表面上はだいぶ解消に向かっていることがわかります。ただ足元でも完全に赤字が解消しているわけではなく、とくに中国に対しては厳しい対応を継続中です。

主要国は自国通貨安政策を展開中で必ずしも貿易赤字と為替がリンクしない

ここへきて難しい状況になっているのは主要国各国が積極的に自国通貨安を進めていることで日本などは貿易黒字が増えてもなかなか円高にはなりませんし、ユーロ圏も似たような状況が示現するようになっています。また米国はとにかく大きな債務を抱えていることからトランプ主導でドル安を志向しており、さらにドル安を目指す動きが加速しそうな状況でこうなると貿易収支とは関係のない為替の動きが示現する点にも注意が必要になってきていることは十分に理解しておく必要がありそうです。

とくにドル円の場合過去40年に及ぶ為替の推移はきわめて政治的な影響を受けていることからミクロ的には貿易収支の影響を大きく受ける者のマクロ的には米国からの政治的な示唆が強く相場に反映することも認識したおかなくてはなりません。

以上、今回は貿易収支について為替への影響をご説明しました。