海外FX業者のスプレッドが国内FX業者よりも広い理由を改めて考える
国内のFX業者で25倍という限られたレバレッジだけで取引をしていますとなかなか短期間に少ない原資で大きな利益を出すことが難しいことに直面することが多くなります。せっかくならばハイレバレッジを提供してくれる海外業者を利用してみようかと個人投資家が思う最大の理由がここにあると思われますが、実際海外FXを利用してみますと取引をはじめて真っ先に違和感を感じるのが海外業者が総じてスプレッドが広いという問題です。
とくに国内の最狭スプレッドを名乗る業者でスキャルピングに慣れ親しんでこられた方はスプレッドが広がることでこれまでのように簡単に約定して利益を上げられないことに困惑することも多いと思います。なぜ海外業者はスプレッドが広く設定されているのでしょうか?今回はそうした疑問の理由についてご説明していくことにいたします。
海外業者の利益はスプレッドとスワップに載せたマージン以外存在しない
海外FX業者は国内のFX業者と比較しますと同じFXをネット上で売買するというビジネスモデルであっても余分な手間を一切かけない相当自動化されたモデルとなっています。まさにネットビジネスに特化した方法で、業者自身は個客からのオーダーを外につなぐことでそこに適正なマージンを付加することで利益としていますので、とにかく顧客を多数集めて大量に取引してもらうことこそが大きな利益機会になっているのです。
したがって多くの海外FX業者は新規顧客を獲得するために口座開設ボーナスを支給したり入金ボーナスを提供したりるすことで取引数量を増やしてもらうことにフォーカスしていることがわかります。
また海外業者の提供する口座はNDD方式であってもSTPと呼ばれるものとECNで仮想的な市場を開設して売買するものの二つが設定されています。どちらも業者がそこに上乗せするマージンだけが利益になっており、STP方式はスプレッドにそのマージンが含まれる状態、ECNはマージンは外だしになる形をとっています。
限られた人数のオペレーティングスタッフで大きな取引量を回していくためにはカバー先を多数設定して取引の最適化をはかり、それにかかる手間暇はアルゴリズムを主体としたITが引き受けているのが海外業者のFXビジネスモデルのコアな部分ということができるのです。したがって会社に利益を残すためには一定のスプレッドのマージン部分が必要になりますし、ECNなら外だしで定額のマージンを要求することになるのです。とくにECNの場合はマージンが限られますからボーナス等のプログラムも導入されていないのが実情です。
国内業者はみせかけの最狭スプレッド以外に利益ソースを多数保有
一方国内業者の殆どは社内にディーリングデスクと呼ばれる部門を設置して顧客からのオーダーをベースにして様々な利益創出行動を日常的に行っています。
ドル円などでは原則固定0.3銭といった最狭スプレッドを多くの業者が提供していますが、基本的にマージン込みでこのようなスプレッドで業者の経営が成り立つ訳はなく、驚くほど様々なことを行うことで利益生み出しているのです。
まず同じ通貨ペアにおける取引では顧客の買いと売りの注文は社内で相殺します。
その上ではみ出た部分を業者自ら反対売買するか、カバー先に出すか、そのまま放置して呑みにするかを常に判断してオペレーションを行うことになるのです。
顧客のオーダーしたポジションに利が乗っている場合には無理に反対売買をしても損失が増えるだけですからカバー先に単純に丸投げして同じように利益を稼ぐ形をとります。
逆にオーダーに含み損が出ている場合には反対売買を行うことで顧客とは利益相反になる形で利益を確保することができるのです。
この場合業者自身が積極的に反対売買をすることで利益を獲得することも可能ですが、もう一歩踏み込んでそのまま呑みにして強制ロスカットになるまで放置しておけば顧客の証拠金の損失部分はそのまま業者の利益として獲得ができるようになるのです。つまり顧客の損失、証拠金の消失は常に業者の利益の源泉となっているのです。さらに原則固定のスプレッドも各国の指標の発表などの場合には故意に約定を遅らせたり急激にワイドスプレッドにしたりすることで利益を稼いでいるのが実情です。こうしてみますと国内業者でスプレッドが狭いのは一面から見ますと非常にお得に見えますが、それ以外の部分でかなりのコストをわからないうちに業者にむしりとられていることがあらためて理解できます。
海外業者のボーナスやキャッシュバックはすべてスプレッドから捻出
海外業者の多くが取引に付与してくれるボーナスやキャッシュバックのコストも実はスプレッドから捻出されています。
クレジットという形で証拠金にプラスして売買してもらうボーナスはそれで利益が出れば業者にとっては取引ボリューム増加の要因になりますので非常にプラスになりますが、ひとたび損失がでてロスカットになった場合には顧客が投入した証拠金と同様に損失の引き当てに使われてしまいますから、もともとなかった証拠金の損失を業者が負担する形となります。
もちろんすべての証拠金がそのような損金にはなるわけではありませんがゼロカットシステムを導入している業者の場合は一定の割合が業者負担になっていることから、これもSTPのスプレッドを幅広くすることで対応せざるを得ないものといえるのです。
こうしてみてきますと、海外FX業者が設定しているスプレッドのコストというのはある意味かなり仕方ないものであり、それでも国内業者に比べれば透明性の高いものであることがわかります。日常的な取引上はできるだけ狭いスプレッドが売買しやすいのは事実ですが、よく考えてみると海外FX業者のスプレッドは決して高いコストではないものだということがわかります。むしろ顧客として負担すべき業者利益が限定されているという点では逆に有利な仕組であるともいえるのです。
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