FXDDのゼロカットシステム、機能しなかった大事件を振り返る

FXDDのゼロカットシステム、機能しなかった大事件を振り返る

海外FXのメリットが活かされたスイスフランショック

ゼロカットシステムとは

海外のFX(外国為替証拠金取引)業者を利用する際に大きなメリットになるのが、国内の最大レバレッジ25倍を大きく上回る「超ハイレバレッジ」と、追証が発生しない「ゼロカットシステム」です。

この場合の追証とは、証拠金維持率がマージンコール水準を割り込んだため、強制ロスカットされないために入金を促すものではありません。含み損が急激に膨らんで証拠金がマイナスになったために、借金状態となり、その借金返済を促す追証のことになります。

ゼロカットシステムを採用しているFX業者であれば、証拠金がマイナスになると、元本を上回る損失分はFX業者が負担してくれるため、借金を背負うことはありません。そのためハイリスクのトレードにもアクティブにチャレンジすることができるのです。

国内では、ゼロカットシステムを採用しているFX業者はありません。証券取引法で、損失補填の約束や行為を禁じているからです。つまり、国内でFXをするということは、不測の事態が起きた場合、多額の借金を返済しなければならなくなるリスクがあるということになります。

もちろん海外のFX業者でもすべてでゼロカットが採用されているわけではありませんので、事前に確認をしておく必要があるでしょう。

2015年のスイスフランショック

実際に強制ロスカットが作用せずに、証拠金がマイナスになる事態が起こっています。そのひとつが2015年1月15日に起きた「スイスフランショック」です。

スイス国立銀行はスイスフラン高を抑えるために3年にも渡り、スイスフランを売り、ユーロを買うという為替介入を継続していました。そのために極めて強いサポートラインが、1ユーロ1.20スイスフランにあり、トレーダーも安心してナンピンを繰り返すような状況だったのです。しかし、この日、スイス国立銀行は為替介入を取りやめる発表をしました。

そのためにユーロ/スイスフランは一時40%を超える暴落となり、5分間で1600pips、20分間で3800pipsもの急激な変動が起こったのです。するとインターバンクでも為替レートを表示できなくなり、取り引きが一時的に停止。再び値が付いたときには、値が飛んでいて、強制ロスカットラインを下回っていたというケースが続出することになります。

このように値が飛んだ場合、ストップロス注文を入れていても、強制ロスカットラインであっても関係なく、再度表示された為替レートで決済されてしまうのです。そのため国内のFX業者を利用していると、借金返済の追証が発生する事態となってしまいました。

このとき、日本人トレーダーから圧倒的な支持を受けている「XM」といった海外FXでは、ゼロカットシステムが作動し、追証は発生していません。これが国内FXと海外FXの大きな差だといえます。

しかし、そんな中、ゼロカットシステムを採用しているにも関わらず、ゼロカットしなかった海外のFX業者がありました。それが老舗ブローカーとして有名な「FXDD」です。

評判を失墜させてしまったFXDD

FXDDのスイスショックフランへの対応

2002年にアメリカのニューヨークで創業されたFXDDは、いち早く日本市場に目をつけ、日本語サポートに力を入れるなどして、日本人トレーダー獲得に成功していました。特に2010年に国内のレバレッジが規制されると、最も多くの日本人トレーダーが利用する海外のFX業者になりました。今もFXDDのホームページでは、日本人利用者実績8年連続NO1と公表しています。

人気を誇ったFXDDでしたが、スイスフランショックが発生した際に発表したコメントは、「今回はサービスの範囲を超えており、顧客同意書上、今後利用するにはマイナス額を入金する必要がある」という信じられないものでした。

XMなどがゼロカットを施行しているにも関わらず、FXDDは「今回はできない」と言い出したのです。トレーダーのクレームが殺到したのは当然のことでしょう。大きな損失になるため廃業に追い込まれることになったFX業者も現れるほどでしたから、FXDDとしてはとにかく潰れることだけは避けたかったということです。

この対応によってFXDDの信用は失墜しました。ゼロカットシステムのサービスを提供しますと告知して顧客を集めておいて、いざその事態になったら裏切ったわけですから、そんなFX業者を信頼するはずもありません。

ちなみに、FXDDの対応は、証拠金がマイナスになったトレーダーに対して追証を行ったわけではなく、あくまでも今後もFXDDで取り引きをしていく場合は借金分を返済してくださいというものです。ここですっぱりFXDDを利用しなくなったトレーダーに対しては、ゼロカットが施行されたことにはなります。

スイスフランショックでは、このように信用を高めたFX業者と、信用を失ったFX業者に大きく分かれたわけです。

顧客を裏切ったFXDDのその後

実際に背信行為があったFX業者を利用するトレーダーは、ほとんどいないでしょう。現在ではFXDDのレバレッジ以上を提供したり、手厚い日本語サポートを行っているFX業者は他にもあるからです。不測の事態が起こった際に顧客を簡単に切り捨てるようなFX業者で、わざわざハイリスクのトレードをする必要はありません。

現在でもFXDDは存続していますが、保有しているライセンスも不明(公表されていないので、無許可ではないかと考えられます)、スイスフランショック以降、ゼロカットシステムも採用していません。FXDDのホームページ上では、日本人口座保有数NO1とありますが、あくまでも自社調査によるものでしょうし、いつの時期のものなのかも不明です。

FXDDの一件は、海外のFX業者を利用する際に、「ゼロカットされるから超ハイレバレッジでも安心」と安易に考えてはいけないということが判明した大事件でもあります。このような事態を回避するためにも、これまで信用できるような対応をしてきているのかどうかを、事前にしっかりと確認しておく必要があるでしょう。

またFXDDで複数の口座を開設していた場合、強制的に証拠金がマイナスになった口座の補填に充てられたという事例も重要です。リスクヘッジのために、複数の口座を開設する場合は他社との併用が望ましいのではないでしょうか。このようにFXDDの大事件から学ぶことはいろいろとあるのです。