MT5の普及はなぜ思ったように進んでいないのか?

MT5の普及はなぜ思ったように進んでいないのか?

MT4の人気の要因

MT4のメリット

ロシアのソフトウェアである「Metaquotes Software Corp」は、2005年に革新的なトレードプラットフォームである「MetaTrade4」(MT4)を開発し、世に提供しました。それから14年経過した現在でもMT4は世界中のトレーダーに愛用されています。

MT4のメリットは、その高い透明性と約定力です。しかも高い安定性を誇っているうえに、多数のアドオンが組み込まれているために拡張機能も充実しています。世界中のトレーダーがそれぞれ独自に開発したインジケーターやEAをダウンロードして活用できるなど、とても使い勝手の良いトレードプラットフォームです。

様々なシステムトレードを試してみることもできますし、自分でプログラミングしたEAを使用することもできます。自由にカスタマイズできる点もMT4の大きな魅力のひとつです。

そんな世界共通のトレードプラットフォームですが、残念ながら日本のFX業者でMT4を採用しているケースは非常に限られています。使い勝手は良いというものの、MT4はあくまでもFX中級者や上級者向けであって、FX初心者には扱いはなかなか難しいものがあります。

さらに国内のFX業者はDD(ディーリングデスク)方式を採用しているため、透明性や約定力の高いMT4では利益を出しにくいという理由があると考えられます。DD方式だとFX業者とトレーダーは利益相反の関係性になるためです。スプレッドを業界最狭水準にした分を、ディーラーによる呑みや、意図的なスリップページなどで取り戻すことができなくなってしまいます。

EAも利用できないので、国内でシステムトレードをしようとしても、そのFX業者が独自に開発したツールしか使用できません。

MT4が普及しているか、していないかでトレード環境は大きく違うといっても過言ではありません。その点では国内のトレーダーは損をしているといえるのかもしれません。

独自のプラットフォームの評判は?

世界では、2018年第1四半期の取引高の実に半分がMT4を利用しています(日本を除く)。さらに第3四半期や第4四半期に進むにしたがって、なんとMT4を利用した取引高は上昇し、55%を突破するシェアとなっています。トレーダーの2人に1人はMT4を利用して取り引きをしているということですから驚きです。

国内のように独自で開発したトレードプラットフォームを提供しているFX業者は、世界ではどのような評判なのでしょうか?

2018年の欧州証券市場監督局(ESMA)による規制により、欧州からオフショア市場に拠点をシフトしたリテールブローカーも多く登場しましたが、その際に独自のプラットフォームを提供することにして、多くの顧客を失うケースも見られました。日本を除く世界では、もはやMT4が利用できないということは、リテールブローカーにとってはかなりのデメリットになっているということです。

日本人トレーダーも、国内のレバレッジがさらに規制されて10倍になるおそれがあることから、続々海外のFX業者に移行していっています、MT4を利用する日本人トレーダーも今後益々増えていくことが予想されるのです。

ここで問題になるのは、MT4の後継となる新型のトレードプラットフォームの存在になります。

MT5の今後

MT5へのシフトがうまくいかない理由

Metaquotes Software Corpは、2010年に「MetaTrade5」(MT5)にリリースしています。MT4からさらに高機能になったトレードプラットフォームですが、あまりにもMT4が普及し過ぎてしまったために、MT5がリリースして9年経過した現在でもMT5へのシフトは思うようには進んでいません。未だにMT4をメインに利用しているトレーダーが多いのです。

Metaquotes Software CorpはMT4の利用料金を値上げしたり、MT5のライセンス使用料を優遇するなどの対策をしていますが効果はいまいちのようです。MT4のアップデートはすでに終了しており、2019年3月には一部のビルドが公式のサポート対象外となっています。Metaquotes Software Corpとしては、なんとかしてMT5へのシフトを推し進めていきたい考えです。

大きな障害は、MT4とMT5の互換性です。MT4のカスタムインジケーターや使い慣れたEAが、MT5では使えなくなってしまうということです。ですからこれまで安心して利用し、使い慣れてきたMT4を手放すことは、トレーダーにとってはなかなか勇気のいることです。成果をあげていたトレーダーにとってはその傾向は強いでしょう。

FX業者としても、顧客獲得のために、やはりMT4が利用できる環境であることは重要になります。つまりMT5に対応しているFX業者自体もまだまだ少ないというのが現状になります。

これがMT5がなかなか普及していかない原因です。しかし、MT5の高機能をもっと有効的に活用しようという動きも見られるようになってきました。

8000を超える金融商品の取り引きが可能になる?

2019年5月になって、ロンドンに拠点を持つFX業者である「Admiral Markets Group」がMT5で、グローバル株式のインデックス取り引きを7つ開始したことを明らかにしました。

取り引きとして追加された株式インデックスは、

  • マトックス欧州600株式指数
  • カナダS&Pトロント60株式指数
  • MSCLシンガポール株式指数
  • 香港ハンセン中国株式指数
  • 南アフリカFTSE/JSEアフリカトップ40株式指数
  • インドS&P/CNX Nifty50株式指数
  • TSEC台湾50株式指数

以上の7種類です。まったく馴染みのない、聞いたこともないような名称もあるかもしれませんが、各国の取引所に上場している大企業で構成されている重要な株式インデックスになります。

Admiral Markets Groupの役員は同時に、MT5のトレードプラットフォーム上で、これらの株式インデックスだけでなく、FXやCFDなどおよそ8000にものぼる金融商品を取り引きできるようになるだろうと述べています。

8000となるともはや桁違いの取り扱い数になりますが、それだけのことを実現できるスペックがMT5にはあるということです。今後はそんなFX業者の動きに合せて、MT5用のEAもどんどん開発されていくことでしょう。トレーダーも少しずつMT5の扱いになれていくようになるのではないでしょうか。

海外のFX業者で日本人トレーダーから絶大な支持を受けている「XM」では、MT4専用の口座だけでなく、MT5専用の口座も開設できるようになっていますので、早い段階で切り替えられるように実践を今のうちから積んでおいたほうがいいかもしれません。