国内FXのレバレッジが10倍に引き下げられるとどうなるのか

国内FXのレバレッジが10倍に引き下げられるとどうなるのか

国内FXの規制の歴史と背景

国内のレバレッジは最大25倍に規制されている

働き方改革によって残業時間が規制されて収入が減り、その分の穴埋めをするために副業として、24時間取り引き可能なFX(外国為替証拠金取引)を始めるケースも多くなっています。FXはレバレッジを効かせることができるため、少額で大きなリターンを期待できる点がメリットです。

1998年に外国為替取引が完全自由化になって以降、国内FXでも数百倍という超ハイレバレッジの取り引きが可能だったのですが、度重なる金融庁による規制によって2010年には最大レバレッジ50倍、翌2011年には最大レバレッジは25倍まで引き下げられています。

さらにそのレバレッジを10倍にするという見解が、金融庁の公式発表よりも早く報道機関によって広まって業界には激震が走りました。レバレッジは「てこの原理」を意味しており、レバレッジが大きければ大きいほど少ない資金で取り引きできますが、レバレッジが引き下げられると、その分だけ高額な資金を準備しなければならなくなるのです。

米ドル/日本円(USD/JPY)が1ドル108円だとした場合、1万通貨を取り引きするために必要な資金を比較してみましょう。

レバレッジが1倍であれば、「108万円」の資金が必要です。これが、現在の国内最大のレバレッジ25倍だと、「43,200円」となります。もしレバレッジが10倍となると「108,000円」必要になるのです。もはや手軽に始められる投資とは言えないでしょう。

ちなみに海外FXでは金融庁の規制の対象外ですので、レバレッジ500倍や888倍などを効かせることが可能です。仮に500倍のレバレッジだと、「2,160円」で取り引きができることになります。108万円投資しても、2,160円投資しても、ポジションが1万通貨であることは変わりないので、為替変動で1ドル109円になって為替差益が生まれたとしたら、利益はやはり同じ1万円ということになります。

2018年第6回有識者検討会で規制見送り

国内の最大レバレッジは2019年7月時点では、25倍が維持されている状態です。これは2018年6月に行われた第6回の有識者による検討会で見送りが決まったためです。国内FX業者による強い反対の主張が影響しています。レバレッジが引き下げられるということは、これからFXを始めようと考えている層に対して、ハードルが高くなってしまいますから当然の主張でしょう。24時間取り引きできることと同時に、少額で投資できるのがFXの魅力なのです。レバレッジを10倍に引き下げることは、その魅力を半減させることになってしまいます。

多くの反対意見が出たことと併せて複数の要因が絡んで見送りの判断になっていますが、あくまでも条件付きです。今後も各FX業者に状況報告をさせ、ストレステストの結果によってはレバレッジを10倍に引き下げる可能性を残しているのです。2020年になったら急遽、国内FXの最大レバレッジが10倍に変更されることも充分に考えられます。

現在25倍でポジションを保有しているトレーダーにとっては深刻な問題です。まずポジションをすべて決済するか、または多額の入金が必要になってくるでしょう。レバレッジが25倍から10倍に引き下げられると、証拠金維持率が強制ロスカット水準を下回り、強制ロスカットになってしまうからです。ですから今回の規制に対してトレーダーからの強い反対もあったわけです。

国内FXのレバレッジが最大10倍に規制されたら

国内トレーダーの30%以上が実効レバレッジ10倍以上

国内FXの市場規模は、2017年で、626万口座、預かり残高1兆3,000万円、取引高は4,835兆円となっており、トレーダーの内訳としては、実効レバレッジが20倍以上11%、15倍~19倍が10%、10倍~14倍が14%です。レバレッジ10倍以上で国内FXをしている人口はおよそ11万人となります。

海外FXのレバレッジは500倍と聞くと、「レバレッジが高いとハイリスク」、「超ハイレバレッジは怖い」というイメージが先行するかもしれませんが、実際のところレバレッジは自分で操作することが可能です。それを「実効レバレッジ」と呼んでいます。「資金の何倍まで取り引きできるのか」ではなく「資金の何倍までで取り引きしているのか」ということです。

実効レバレッジは、「保有ポジションの評価額÷有効証拠金」で求めます。例えば海外FX利用していても、当初の証拠金が30万円で、3万通貨保有しているものの現在はマイナス15万円の含み損を抱えており、1ドル108円が為替レートだとすると、

  • 保有ポジションの評価額 108円×3万通貨
  • 有効証拠金 30万+(マイナス15万)

となりますので、実効レバレッジは21.6倍になります。必ずしも500倍のレバレッジで取り引きする必要はありません。あくまでも自分の許容できる損失の範囲内に抑えて資産運用できるのです。

つまり海外FXであればレバレッジ1倍~500倍(もしくはさらに500倍超)の間で、自由にレバレッジを選択できるということになります。しかし、国内のレバレッジが最大10倍に規制されると、先ほどの例では証拠金が324,000円必要ですから有効証拠金が15万円の状態では強制ロスカットです。

実効レバレッジ10倍以上で取り引きしている11万人のトレーダーにとっては、規制は足かせにしかなりません。自由を奪われることになるのです。

海外FXを利用するトレーダーが激増する

仮に国内レバレッジが最大10倍になった場合、規制に該当する国内FXトレーダーは30%以上になりますが、どのようなリアクションをとるのでしょうか?

おそらく、実効レバレッジを10倍までに抑える取り引きに切り替えていこうとはならないでしょう。なぜならそれ以上のレバレッジで取り引きできる投資方法があるからです。そちらに切り替えていくトレーダーがほとんどではないでしょうか。

仮想通貨FXという新しい金融商品に乗り換えるかもしれませんが、こちらも金融庁の規制のために最大レバレッジが4倍になりそうです。ですからその多くは海外FXを利用することになるでしょう。

それがわかっているだけに国内FX業者は徹底的に規制反対しているわけです。規制によって30%以上の顧客を失い、海外に流出してしまうことになります。金融庁としても税収面を考慮すると、これ以上国内FXが衰退するのは痛手です。もちろん海外FXをしていても確定申告で納税しなければならないのですが、国内FX業者からの税収額は確実に減るでしょう。

このあたりの葛藤があり、現状は見送りの姿勢になっていますが、今後のストレステストの結果によっては、規制は実現化されるかもしれません。そうなってから慌てて海外のFX業者を探して資金を移動させるよりも、今のうちから海外FXに変更してしまって、じっくりと慣れていく方がいいかもしれません。

海外FXであれば、超ハイレバレッジはもちろんのこと、ゼロカットシステムがあったり、ボーナスが充実している、入金方法の選択肢が豊富といったメリットがたくさんあります。規制が実現化する前に、早々と国内FXに見切りをつけるというのがベストな選択ではないでしょうか。